2006/12/24
更新:2007/01/02

この記事は、LAOX THE
COMPUTER館3階にあるVista開発者向けサポート拠点「Developer Support
Center」で2006年12月22日(金)の17時から行われたセミナー及び、その場で引き続き行われた個別質問で得た情報を元に“Windows
エクスペリエンス インデックス”についてお送りしたいと思います。
なお、当日の会場の様子などはAKIBA
PC Hotline!様のVista開発サポセン週報「第2回:Windows
エクスペリエンス インデックスとは?」で見ることができます。私の後姿も写ってますね^^;
当日は講師であるマイクロソフトの大塚 友則 氏がエクスペリエンス
インデックスにつて解説されていましたが、デベロッパー(開発)よりの情報はなく、概念についての説明が主となっていました。
もともとエクスペリエンス
インデックスについての情報は少なく、「実際のところ何なのだ?」「どう活用できるのか?」といった疑問をお持ちの方も多いと思います。そこでフリーの質疑応答時間に幾つか食い下がって質問してみました。
(開発よりの情報は独自に調査したものです)
※ この記事へのリンクは...
http://www.rainylain.jp/vc/vista/experience_index.htm
※ この記事は独自に作成/掲載しているものですので、内容についてマイクロソフト様などに問い合わせ等行わないように
お願い致します。
■「エクスペリエンス インデックス」とはそもそも何なのか?

↑クリックで別画面に拡大表示されます |
Windows
Vistaについて書かれたページを見ると左のようなスクリーンショットを見たことがある方もいるでしょう。何やらベンチマーク(性能評価)のようにカテゴリと得点なるものが並んでいます。 ここで私を含めて多くの方が誤解しやすいのですが、これはベンチマークではありません。
MS大塚氏も繰り返し強調されていましたが、“エクスペリエンス”つまり体験、PC的に言うと「性能面からみたPCの快適さ」を“インデックス”(指標)化したものです。何だかアバウトな表現ですね。
|
このアバウトさが「=ベンチマーク」と片付けられる原因かもしれませんが、まずは具体的に各項目を見てみましょう。
コンポーネント |
評価についての詳細 |
サブスコア |
プロセッサ: |
1秒あたりの計算 |
4.2 |
メモリ(RAM): |
1秒あたりのメモリ操作 |
4.5 |
グラフィックス: |
Windows Aero のデスクトップ パフォーマンス |
2.4 |
ゲーム用グラフィックス: |
3D ビジネスおよびゲーム グラフィックス パフォーマンス |
3.0 |
プライマリハードディスク: |
ディスクのデータ転送速度 |
5.4 |
これらの各項目と「基本スコア」として右側に大きく数値が表示されています。基本スコアは一番低い項目の値がそのまま選択されます。一般的に「エクスペリエンス
インデックス値」としてはこの総合評価の得点値を指します。なぜ各項目の平均値などではなく一番低い値が選ばれるかというと、その項目が「快適さ」のボトルネックであり全体から見てもその項目が原因で快適さが決まるとの考え方からのようです。
項目別で分かりにくいのがグラフィックスの部分で項目が2つあります。「グラフィックス」は主にビデオ表示用のメモリ(VRAM)の容量や能力(転送スピード)で、「ゲーム用グラフィックス」はGPU(ビデオ表示用の専用半導体チップ)の能力の影響を受けるそうです。そう、「影響」です。
この点が一番ベンチマークとは違うという説明には良いかと思います。ベンチマークとはある特定の処理をPCに行わせてその結果を数値で表します。有名なところではFuturemark社のPCMarkや、オンラインゲームFINAL
FANTASY XIが快適にプレイできるかを測定するOfficial Benchmark
Programなどがあります。自作PC関連ではよく「グラフィックカードを変えたら数値が2000から5000まで上がった」という感じで記されます。
エクスペリエンス
インデックスはPCの性能により変化しますので、値が決定されるまでにはこのベンチマークの部分も当然あります。使用中のPCがVistaでも快適に使用できるかを測定するWindows
Vista Upgrade Advisor(Windows XP用)にも付属しているWinSat.exe コマンドを実行してみます。
なお、Windows VistaでWinSat.sxeを実行する場合は、コマンドプロンプトを管理者権限で起動させて行います。そうしないと結果が別ウィンドウのコマンドプロンプトに表示される上、そのウィンドウ自身がすぐに閉じてしまいます。

※Windows Vista Upgrade Advisorに付属のWinSat.exeはRC1(リリース候補版:Buid5600)なので製品版とは表示/測定可能項目が若干異なります。
ご覧のとおりベンチマークらしく、実行にかかった時間や転送速度などの数値が表示されいます。ここで私はこの値からエクスペリエンス
インデックス値に換算できないものかと考えてMS大塚氏に換算表のようなものが無いかと尋ねてみました。例えるなら「Video Memory
Throughput」が1000.0〜2000.0ならグラフィックの評価は2であるといった換算表です。これがあればグラフィックカードがnVidea社のGeForceだろうがATI社のRADEONであろうと、さらにはどのチップを使っていようが共通的に評価値が予測できることになります。
答えは残念ながら「NO」でした。
その理由を聞いたところ以下のような事情によるものでした。
- 評価値はWinSatで得られた測定値から直接決定されるものではない。
- 評価ロジック(何をもって決定しているのか、どのような計算をしているのか)は非公開である。
つまり、ビデオカードを変えた場合 Video Memory Throughput
の値は向上するかもしれませんが、「快適さ」には関係ないと判断されれば評価は変わらないということです。あくまでベンチマーク値は影響するだけで直結するわけではりません。逆にオンボードグラフィックなどでグラフィック用にメインメモリをどのくらい割り当てるかといった項目を変更すると、ベンチマーク的には測定できるか出来ないかといった程度で数値自体は変化しません(*)が、より多くのアプリケーションを快適に
同時使用できるであろうとの考えからエクスペリエンス インデックス値が上がるということがありえます。
* もちろん測定内容にもよりますが、測定に必要なメモリ量以上の割り当てであれば数値は変わらないと思います。
■「エクスペリエンス インデックス」の特徴
「エクスペリエンス インデックス」が快適さを表す指標であることが分かりましたので、今度は特徴を見ていこうと思います。
※
RC2までの「カテゴリ得点」「総合評価」が、製品版では「サブスコア」「基本スコア」に記載が変更されています。
- 「スコア」について
得点は現在1.0〜5.9までが定義されています。
どんなに性能が悪くても最低は1.0で、逆にどんなに性能が良くても最高は5.9になります。ただし、現在とまったく同じパーツ構成でも実は高性能であった場合、将来定義が拡張されれば何もしなくても得点が7.0というように上がることがあります。(実は5.9を越えていた場合)
- スコア範囲の定義更新について
現在の定義は2006年10月ごろに一般的に入手可能な最新パーツを元に構成したPCで5.9となるようになっているようです。この定義の更新は市場に登場するパーツの性能向上具合等でみなおされ、およそ12ヶ月〜18ヶ月で更新される予定のようです。
- パーツの性能では決まらない
自作を行っている方はご存知かと思いますが、同じパーツを組み入れたPCでも性能に差が出ることがあります。例えば、最新のグラフィックカードを購入して組み入れてもCPUの性能があまり高くないと足を引っ張られてベンチマークの値が思ったほど伸びない場合などがあります。
エクスペリエンス インデックスではあくまでそのPCへのパーツ組み込み時の性能値が使用されます。使用しているドライバソフトの能力にも影響されます。
つまりどのパーツを使っているかではなく、実測の結果どうなのかが重要なのです。
- スコア値はOSのインストール中に計算される
「パフォーマンスの情報とツール」から再度計算させることも簡単にできます。また、パーツ構成
やドライバを変更した場合は手動で再計算させる必要があります。

- 値はあくまで目安として用いられるものである
現状3.0以上がAeroを快適に使用できる最低基準のようですが下回ると動かない分けではありません。(Aeroは2.0以上ないと有効になりません)
実際スクリーンショットで出ている2.4でも、私はブラウザやメールといった使用では重くはないと感じました。
(注意:3以下では軽めの3Dゲームでも表示が正しく行われない事があります)
快適さはあくまで個人差がありますし、測定時に動作しているソフトも少なからず影響してしまいますのでメーカーが値や快適さを保障したりするようなものではありません。例えば、エクスペリエンス
インデックス値がカタログより低いといったような場合、PCメーカーが交換や返品に応じるかというと「そのようなことはないでしょうね」とのことでした。(談:MS大塚氏)
■測定に影響する要素
*1下記の情報は公開されていた資料などを元に作成していますが、必ずしも正確かどうかは分かりません。 |
*2
掲載しているコマンドは一例です。実際の測定においては別のパラメータも使用されます。
コマンドの使用例とお考え下さい。 |
Windows
Vistaの場合は、WinSat測定による結果などは下記フォルダに格納されますので、測定でどのようなコマンド引数を使用しているか、詳細な測定結果値はいくつだったのかなどを見ることができます。
格納フォルダ:%systemroot%\Perfomance\WinSat\Database
基本スコア
最低値となったコンポーネントの評価が〜.9である場合は、基本スコア値で0.1プラスされた値が表示されることがあります。
(実際にそうなるかは分かりませんが、例えば最低値をマークしたグラフィックが2.9なら基本スコアは3.0と表示されるといった感じです)
制限
- グラフィック機能がPixel Shader 3.0をサポートしない場合は最大4.9
(Aero使用にはPixel Shader 2.0以上が必要です)
プロセッサ
- 論理プロセッサの数
Pentium4のHT(ハイパースレッディング)、Core2Duoなどのマルチコア(クアッドコアにも対応)
→ WinSat.exeはマルチスレッドで測定されるので、結果として下記の項目値がよくなると思われます。
- LZW圧縮/解凍処理の測定値
→ "WinSat.exe cpu -compression" 「CPU LZW
Compression」値[MB/s]
- AES暗号化/複合化処理の測定値
→ "WinSat.exe cpu -encryption" 「CPU
AES256 Encryption」値[MB/s]
- Windowsメディアビデオエンコードの測定値
→ "WinSat.exe media ?"
メモリ(RAM)
- メモリ帯域幅の測定値
→ "WinSat.exe mem" の「Memory
Performance」値[MB/s]
メモリ量1GB、帯域幅2949.07[MB/s]で4.5でした
制限
メモリ量 |
最大スコア |
256MB未満 |
1.0 |
500MB未満 |
2.0 |
512MB以下 |
2.9 |
704MB未満 |
3.5 |
960MB未満 |
3.9 |
1.5GMB未満 |
4.5 |
※グラフィック用に割り当てられた容量を除く
グラフィックス
- ビデオメモリ帯域幅の測定値
→ "WinSat.exe dwm" の「Video Memory Throughput」値[MB/s]
- ビデオ表示用のメモリ(VRAM)の容量
→ 128MB搭載より、256MB搭載の方が評価は良いです。
チップセット統合グラフィック環境の場合は割り当て量を増やすと評価がよくなることがあります。
(この項目はもしかしたら「制限」事項なのかもしれません)
制限
- DirectX 9.0未満のスコアは1.0
- WDDM(Windows Vista Display Driver Model)未サポートのドライバで最大は1.9
ゲーム用グラフィックス
- 特殊効果処理(フレームレート)の測定値
→ "WinSat.exe dwm" の「Graphics Performance」値[F/s]の10分の1を四捨五入したもの?
制限
- DirectXのD3D9が未サポートならスコアは1.0
- DirectX 9.0以上、WDDMドライバサポートで最低2.0
プライマリハードディスク
- ディスク帯域幅(読み書きの速度)の測定値
→ WinSat.exe disk の「Disk Performance」値[MB/s]
"WinSat.exe disk -run -read -n 0" |
ランダムアクセス読み込み |
"WinSat.exe disk -run -write -n 0" |
ランダムアクセス書き込み |
"WinSat.exe disk -seq -read -n 0" |
シーケンシャルアクセス読み込み |
"WinSat.exe disk -seq -write -n 0" |
シーケンシャルアクセス書き込み |
-n ? はディスク番号(0から)
参考
・Understand and improve your computer's performance using the Windows
Experience Index
2006/12/21掲載のUS Micorosoftの記事
http://www.microsoft.com/windowsxp/using/windowsvista/krieger_wei.mspx
(英語) ・Windows Vista System Requirements And WinSAT
Microsoft WinHEC 2006 資料(要:Microsoft Office PowerPoint)
http://download.microsoft.com/download/5/b/9/5b97017b-e28a-4bae-ba48-174cf47d23cd/CPA101_WH06.ppt
(英語)
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その1 |
「エクスペリエンス
インデックス」とはそもそも何なのか?
・快適さを表す指標である
・特徴
・測定に影響する要素 |
その2 |
「エクスペリエンス インデックス」活用方法
・具体的に何に使えるの?
・評価マークの使用について。個人でも使えるの?
・API は?ActiveXに埋め込む?(開発サイドの話) |
その3 |
活用想定例にみるエクスペリエンス インデックスの実際
・メーカー製PCのBTOにおけるパーツ選択
・アプリケーションが要求するスコア値
・おまけ - Aero利用条件 |
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