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2007/05/13(日) BNN - 勝利すべきは愛なり

公式BNNワールドニュースが更新されました。
本日導入されたパブリッシュ44に関する物語のようです。

瀕死の重傷を負ったまま、どろどろとしたおびただしい血の帯をワイナリーの床に残しつつ、Grierは闇の中へと這っていった。下へ下へと地下道を降りるその手でロウソクをめいっぱいに突きだしても、迫り来る闇を数十センチほど押しのけるのがやっとだった。


瀕死の重傷を負ったまま、どろどろとしたおびただしい血の帯をワイナリーの床に残しつつ、Grierは闇の中へと這っていった。下へ下へと地下道を降りるその手でロウソクをめいっぱいに突きだしても、迫り来る闇を数十センチほど押しのけるのがやっとだった。

ひとつ這い進むごとに、長く過酷な戦いで処刑人に負わされた体中の傷口に土が入り込み、その都度うめき声が漏れた。その動きは、時が止まってしまったかと思われるほどゆっくりだった。2人はロングのダンジョンの奥底で長く苦しい戦いを展開した。Grierは、敵の攻撃に身をさらすことで辛くも勝利したのだが、それによって彼も致命傷を負う結果となってしまった。

そこまでする意味が本当にあったのだろうかと、彼は悔いずにはいられなかった。いまは去りしブリタニアの王が残した徳のシステムの熱烈なる信奉者ではあるが、体内の血が外へ流れ出るごとに、その信念は根本から揺らぐのであった。闇がのしかかってくるようだ。ロウソクの炎が消えかかっているのか、それとも己の意識が遠のいているのか、Grierには区別がつかなかった。それでも彼は、またひとつ、僅かなとっかかりに指をかけ、渾身の力を込めてほとんど死体と変わらない己の体を数センチだけ引きずった。

この聖なる行軍が終点に近づくにつれて、Grierの意識は溶岩の激流が発する有毒ガスのためにますます弱まっていた。そんな彼に力を与えていたのは、前方に差し出した炎の美しさだ。本物のロウソクの炎はよほど美しかろうと想像するだけで、力がわいてくるのであった。

最後の角を曲がる。すると目の前に愛のロウソクが現れた! それは究極的な憎悪の骸布に包まれ、炎は輝きを失っていたが、Grierは確信していた。彼の手の中にある炎を愛のロウソクに移せば、Astarothの呪縛を解くことができると。再び生き生きと燃え上がるに違いないと。

彼は起きあがり、魔法の溶岩迷路の縁を見渡した。そして絶望した。これほどの速度で始終変化する迷路を通過することなど、今の自分には不可能だ。愛のロウソクに炎を移すことなど、とうていかなわない。彼は最後のため息をつくと、その場にへたり込み、荒岩に頬を押し当て打っ伏した。血だらけの手で握りしめていたロウソクは転げ落ち、その炎は、洞窟の地面を覆う古代の土埃の上で次第に小さくなっていった。

しかし、じわじわと闇に飲み込まれながらも、Grierは願った。勇敢な冒険家たちが自分の後に続いてくれることを。いつかもっと強い人間が現れて、自分には成し得なかったこの仕事をきっと継いでくれる。息を引き取る間際、愛のロウソクはほんの一瞬だけ彼に輝いて見せた。Grierは、Astaroth打倒の日が近いことを祈りつつ、最後には愛が憎悪に打ち勝つのだと信じつつ、この世を後にした。

勇敢なるブリタニア市民は、かならずや彼の志を受け継ぐことであろう。さもなくば、あらゆる価値が、すべての愛する者たちが、みなたちどころにこの世から消えてしまうからだ。

 

 

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